【100歳時代プロジェクト・ライフプランシンポジウム】「生涯現役」で豊かな人生

基調講演 学びで覚悟と備えを

健康・福祉総研理事長 國松善次氏 健康・福祉総研理事長 國松善次氏

 私は、これからの日本は異常高齢社会だと考えている。世界で日本が初めて経験する厳しい時代をどう生きるかが問われている。一人一人が覚悟と備えをしないといけない。登山でいうと、上りは頂上を見てがんばれますが、下りは引力と体重を支えるためにふんばって歩かないといけないうえ、足も疲れてくる。寝たきりになるかもしれない。認知症になるかもしれない。交通事故に遭うかもなど、下り坂は「まさか」の連続。それにどう備えるのか。

 人生はピンピンコロリの「PPK」と、認知症・寝たきり・孤独死の「NNK」の2つの道がある。どちらに行くかを決めるのは自分。人生は1人1回限りのドラマで、主役、脚本家、監督をすべて自分が兼ねる。私の人生は70歳で新しいドラマが始まった。車の免許を取り、初心者マークと高齢者マークを貼った。マラソンも始め、フルマラソンを完走した。このためにエレベーターにもエスカレーターにも絶対に乗らない。電車に乗っても座らない。立って足を踏ん張ればスクワットができる。本人の継続する意思が大切で、三日坊主では話にならない。

 健康長寿には5つのカギがある。まずは筋肉を若く保つこと。筋肉は使わないと減るのでいじめることが大切だ。2番目は血管を若くすることで、バランスの良い食事と深い呼吸が大事だ。3番目は、筋肉や骨、血液を作る加工工場である腸の健康。次に脳を使うこと。刺激し感動させる。最後が心。「気」と言ってもいい。気がすべてを決める。気が元で「元気」、気が病んだら「病気」、気には力があるので「気力」と書く。ワクワクする目標を持つことが大切だ。

 65歳になったら、いかに老後を生きるかという基礎学習が必要で、これを義務教育にすべきだと考えている。これが「100歳大学」だ。人生の上りには、義務教育という仕組みがあり、先生と教科書とロマンもあった。ところが下りには階段も手すりもなく、教科書も先生もいない。100歳大学を全国の自治体に広げ、住民と行政が健康な人づくりと街づくりを一緒に取り組めば、人も街も健康になる。継続には3つの秘訣(ひけつ)がある。1つは目標を持つこと。2つ目が仲間を作ることで、1人では必ず挫折する。最後が褒められること。自分で自分を褒めてもいいし、仲間がいれば褒め合う。頑張った人には、行政が税金をまける仕組みがあったらもっといいと思う。現職の知事のときに思いつけばよかったが。

 100歳人生は学ぶこと、働くこと、そして楽しむことが大切。楽しみがないと続かない。人の役に立って少しでも金になることがあればなお良い。それを続ける生活スタイルを身につけてほしい。

 くにまつ・よしつぐ 昭和13年生まれ。34年滋賀県立短大農業部卒、大阪府庁入庁。41年中央大学法学部卒。51年滋賀県庁入庁。平成10年に滋賀県知事に初当選。18年まで2期を務めた。「100歳大学」を運営する健康・福祉総研理事長。

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