【100歳時代プロジェクト】100年先へ 統合型リゾートで経済・地域に貢献 シーザーズ・エンターテインメントの取り組み

 「地域社会で女性が担う役割は極めて重要だと思います。例えば、事業収益性の観点においても男女比率が均等な企業はそうではない企業に比べて、(利払い前・税引き前利益を売上高で割った)EBITマージンが15%高く、経営陣の女性比率が高い企業は22%高いなど、女性がより深く関与している方が業績が良いというのは多くの統計結果として出ています。今後の100年の中で競争力を持って企業を運営するには、多様性を高め、有能な人材を活用していかなければなりません。そのためには、女性の活躍を支援し、後押しする文化の醸成が不可欠です。社内調査の結果、シーザーズの全従業員(約6万5000人)の中で、マネジャーはほぼ均等の男女比であった一方、経営層はごく少数でした。そこで、私たちは約1年半前に、2025年までに経営層のジェンダー公平性を達成するという公約を発表したのです。私はその達成に大きな自信を持っていますし、私たちが達成することで地域社会全体に良い影響を与えられると信じています」

 --事業者として、IRの魅力をどう考えるか

 「IRとは地域社会を作っていく手段です。より良い地域社会の構築に向け、最適なオペレーターと長期的な協力関係を結べば、政府、自治体、NGOなどとの緊密な連携が求められるさまざまな社会的課題の解決にもつながります。ラスベガスは全てを作り込むところから始まりましたが、日本は既に美しい国として多くの人が行きたいと思っている国。私たちは、日本独自のIRを通じて、対応が急務とされている地域社会の活性化や少子高齢化による労働人口の減少といった日本が直面している社会課題の解決に貢献出来ると確信しています。地域社会がうまく循環すれば、次の100年も成功することは間違いありません」

【プロフィル】ジャン・ジョーンズ・ブラックハースト

 シーザーズ・エンターテインメント副社長。1991年、米ラスベガス市初の女性市長に就任。2期8年の任期中、観光客を1500万人から3500万人に倍増させるなど市の発展に寄与する。99年にシーザーズ・エンターテインメント入社。ギャンブル依存症対策やシーザーズ財団代表として地域社会への支援などに取り組む。スタンフォード大学卒。

【用語解説】IR(統合型リゾート)

 ホテルや国際会議場、飲食店、商業施設に加えて、カジノも含む複合的な大規模施設。ラスベガスやマカオ、シンガポールなど世界各地で整備が進む。国内では平成28年に「IR推進法」が成立し、昨年7月には施設の基準や事業の進め方を盛り込んだ「IR実施法」が成立。全国の自治体が誘致を検討している。今年3月には、客室総面積が10万平方メートル以上の巨大なホテルと国際会議場(展示場)を併設することを必須とするなどのIRの要件を定めた「IR実施法施行令」が閣議決定された。

シニアの社会参画 多角的に支援

 IRを通じて経済や地域社会の発展にどう貢献できるかという視点から、シーザーズ・エンターテインメントは地域社会が直面するさまざまな課題に取り組んでいる。例えば「高齢化社会における孤立化」といった課題解決に向け、地域の高齢者のニーズに合わせた雇用機会の創出や、人的、資金的な側面から多角的な支援を行っている。

シーザーズ・エンターテインメントが寄贈した「フードバン」の前で記念撮影するジャン・ジョーンズ・ブラックハースト副社長(中央)と同社のボランティア組織「ヒーローズ」で地域に貢献する従業員 シーザーズ・エンターテインメントが寄贈した「フードバン」の前で記念撮影するジャン・ジョーンズ・ブラックハースト副社長(中央)と同社のボランティア組織「ヒーローズ」で地域に貢献する従業員

 IR産業では「あえてパートタイマーとして働きたい」と希望するシニア世代が多く採用されている。シニア世代にとって、働く目的を持つことや人とコミュニケーションを取ることが重要と考えられているからだ。「人は相手から感謝されたり自分が社会の一員と実感したりすることで、人生をより豊かにしていける。誰も取り残さない社会とは誰もがやれることがある社会のことだ」とブラックハースト副社長は語る。

 また、高齢者に食事を届ける活動を行う「ミールズ・オン・ホイールズ米国協会(MOWA)」に、「フードバン」と呼ばれる配給車両を15年間で62台寄贈。2003~17年の間に寄付した330万ドルで、全米各地の高齢者に400万食以上が提供された。「孤立している高齢者には1日誰とも話さない人も多い。バンが来て初めて会話ができたと喜ばれた」(同)と効果をあげる。

 シニア世代の栄養状態などを長期間調べる調査にも資金を拠出。シニア世代がペットに食事を分け与えている現状が明らかになったことから、フードバンでペットフードも届けるなど調査や需要に基づくきめ細かい支援につなげている。社会問題となっている食料廃棄を減らすため、食べなかった食料は冷凍してフードバンクに提供するなどフードロス問題にも配慮する。

 さらに、高齢者の夢を実現する非営利団体「セカンド・ウィンド・ドリームズ(SWD)」のプロジェクトの支援も積極的に行っている。演劇をしてみたかったお年寄りにラスベガスのステージでパフォーマンスを披露する機会を設けるなど、「自分たちが社会の一員として重要視されているとシニア世代の人にもう一度感じてもらえるプログラム」(同)を応援する。ネバダ州の美術館と協力し、高齢者に絵を描いてもらうなどの教育、文化支援も行っている。

 こうした取り組みは、シーザーズ基金や同社の従業員が地域社会にボランティアとして貢献する「ヒーローズ」という社内プログラムが主体となって行っている。昨年はシニア世代やさまざまな地域のグループで、従業員が累計50万時間のボランティアを行った。

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