【100歳時代プロジェクト】次世代の負担減らす人生を 生物学者・本川達雄氏に聞く

 ◆ドクチョウに学ぶ

 次世代を残した後も長く生きられるという、生物としては極めてまれな特徴を手に入れた人間。本川氏によると、人間以外で次世代を残した後に長生きする生物にドクチョウ(毒蝶)がいる。通常、チョウは羽化後2週間程度の寿命だが、中南米の熱帯に生息するドクチョウの仲間は半年も生きる。

 幼虫時代、餌とする植物から有毒物質を体にため込んでおり、それを知らずに捕食した鳥はすぐに吐き出し、二度と食べない。

 「長生きする理由は、鳥に自分を食べさせることで有毒だと学習させ、次世代を狙われにくくしていると解釈できる」

 そこから生物学的に導き出されるのは、「次世代のために生きることが、長生きの許可証が与えられる条件」になるのだと説明する。

 これを人間に当てはめると、「体力的に可能なら、例えば孫の面倒を見たり、農業などで食糧を生産したり、老老介護を行ったりすることは次世代の負担を軽減できるので勧められる」という。

 体に関しては、50歳以降は「保証期間を過ぎているのだから、健康な状態が標準との考えはできるだけ持たず、何か病気があるとか体が痛いとかいうことがあってもあまり不幸だと思わないで過ごしてほしい」と強調する。

 そして、「心の準備がなければ急に対応できないので」とした上で、「50代になったら自分の老後について、どう過ごすかをぜひ考え始めてほしい」と結んだ。

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【プロフィル】本川達雄

 もとかわ・たつお 昭和23年生まれ。東京大理学部卒業後、琉球大助教授などを経て、東京工業大で平成26年まで教授を務める。ナマコなど硬さが変化する皮膚組織研究の権威で、4年に出した『ゾウの時間ネズミの時間』(中公新書)は現在まで約90万部のロングセラー。近著に『生きものとは何か』(ちくまプリマー新書)。

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