【100歳時代プロジェクト】次世代の負担減らす人生を 生物学者・本川達雄氏に聞く

 100歳まで生きられるのが当たり前になる時代が迫る中、生物学者で東京工業大名誉教授の本川(もとかわ)達雄氏は「生物学的には人間の寿命は50年で、その後の50年は人工的に生み出された特別な時間」と断言する。その特別な時間について、「次世代のためになる人生を送ることが勧められる」と語る本川氏に、生物学の観点から高齢期の生き方のヒントを聞いた。(山本雅人)

本川達雄・東京工業大名誉教授 本川達雄・東京工業大名誉教授

 ◆本来の寿命は50年

 生命の本質は「続くこと」と語る本川氏。だが、人体は構造物のため、老朽化し耐用年数が尽きるときが来る。それを乗り越える方法として編み出したのが、「ある程度のところで体を新しく作り直す。それが子供を作るということだ」と解説する。分かりやすい例がサケで、産卵し、次世代に遺伝子を残すことができたら、すぐに死ぬのだという。

 本川氏によると、哺乳類や鳥類は心臓が15億回程度鼓動したら寿命を迎えるとされ、体の大きさと寿命との関係なども加味すると、1分間に20回くらい鼓動するゾウは70年前後、600~700回鼓動するネズミは1~2年の寿命となる。そこから換算すれば、「人間の寿命は50年くらい。その証拠に、50歳を過ぎると視力や体力が落ちたり、病気になりやすくなったりする」と話す。

 だが、医療の進歩や食糧供給の安定化、冷暖房の普及など、科学技術の発達により、感染症や環境の苛酷な変化で早く亡くなることが減り、寿命が劇的に延びた。その点について、「50歳以降の人生というのは、医療や技術によって作られた特別な時間であり、感謝しないといけない」と語る。実際、人類の数百万年の歴史の中で平均寿命が50歳を超えたのはここ数十年のことだ。

 ただ、それは「莫大(ばくだい)なエネルギーと引き換えに可能となった」とし、「本来、次世代が使うはずのエネルギーや食糧を消費してしまっていることを意識しないといけない」と指摘する。

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