シンポジウム「100歳時代のライププラン~お金・仕事・生きがい」

資産形成・運用で適切にアドバイス

パネルディスカッションで発言する日本FP協会の白根壽晴理事長=26日午後、東京・三田の慶應義塾大三田キャンパス(酒巻俊介撮影) パネルディスカッションで発言する日本FP協会の白根壽晴理事長=26日午後、東京・三田の慶應義塾大三田キャンパス(酒巻俊介撮影)

 --100歳時代に求められる資産形成は

 清家氏 職業寿命を延ばすという面では、自分自身の能力や健康状態を高める投資によって人的資産形成を図ることが何より大切です。また金融・物的資産形成で大切なのは、長期的にリスクを分散していくことでしょう。

 三上氏 私たち若い世代には、まずどういう人生を生きたいかを考えることが重要だと思います。リスクをとって大きなリターンを求めるのか、小さなリスクで安定した人生をすごすかを自分の中で決め、その上で20代は自分自身に投資をして視野を広げることが大切だと思います。

 水野氏 資産寿命を延ばすという分野ではお手本や教科書がまだあまりありません。野村証券も含め各金融機関は年齢に応じてどのような商品をお勧めしていいのかルールを定めています。年齢に縛られず柔軟に対応した方がいいとは思っていますが、高齢になると判断力が鈍ってくるのが現実です。そこで野村証券では慶應義塾大学と共同で長寿や加齢がどのような影響を及ぼすのか研究して、社員の研修などにも生かしているところです。

パネルディスカッションで発言するGNEXの三上洋一郎代表取締役=26日午後、東京・三田の慶應義塾大三田キャンパス(酒巻俊介撮影) パネルディスカッションで発言するGNEXの三上洋一郎代表取締役=26日午後、東京・三田の慶應義塾大三田キャンパス(酒巻俊介撮影)

 白根氏 これからどう生きていくのかというライフプランをしっかりと考えた上で、資産形成や資産運用について考えることが大切です。資産形成では、時間を味方につけて早めの長期投資が大事です。運用では国際的な分散投資も考えていただきたい。長期、国際分散、積立投資を行うことで、ある程度リスクをコントロールできると思います。

 --資産寿命を延ばす上での金融機関や専門家の役割は

 清家氏 健康寿命を延ばすためのヘルスケアに医師のアドバイスが必要なように、資産寿命を延ばすためのウエルスケアには金融の専門家のアドバイスが必要です。その際にアドバイスをきちんと理解する大前提として、リスクとリターンの関係など金融リテラシーを身に付けておかなくてはなりません。

 水野氏 若いころから資産形成をし、老後に向けて備え、そして取り崩していくというサイクルの中で、お客さまのニーズに適切に応えるため、野村証券では「人生100年パートナー」を宣言しました。0歳から100歳、その先も見据えた長い時間軸でしっかりとご相談に応じられるようにしたいというものです。昨年4月に設けた高齢の方を専門にサポートする「ハートフルパートナー」もブラッシュアップして全国展開していきます。

 白根氏 金融について自分で理解することが重要です。FP(ファイナンシャル・プランニング)技能検定に合格した人が181万人になりました。手軽に受けられるのでぜひ勉強を始めていただきたい。

 --職業寿命を延ばすために必要なことは

 清家氏 生涯現役社会の実現には、その阻害要因となっている定年退職制度や、収入に応じて年金が減らされてしまう在職老齢年金制度などを見直す必要があります。

 白根氏 長寿を楽しむには経済的にも精神的にも居場所と出番が必要で、働くことを通じて社会と結びつきを持つことが良いと思います。ワークシェアリングやタイムシェアリングといった、それぞれの体力や意欲にあった働き方を見つけていただきたい。

パネルディスカッションで発言する野村證券の水野晋一執行役員=26日午後、東京・三田の慶應義塾大三田キャンパス(酒巻俊介撮影) パネルディスカッションで発言する野村證券の水野晋一執行役員=26日午後、東京・三田の慶應義塾大三田キャンパス(酒巻俊介撮影)

 三上氏 20代前半まで勉強をして65歳まで働いて引退するという従来の単線型の人生ではなく、いろいろな学び方や働き方を選択できる複線型の人生が認められるようになってきたのは素晴らしいことだと思っています。

 水野氏 野村証券でも働き方改革を進めています。働き方の質を高めて生産性を上げ、それによって創出された時間を自分や社会のために役立ててほしいと考え、会社としてもいろいろな努力をしています

 --100歳時代のライフプランで大切なことは

 清家氏 長い人生を生き抜くために最も大切なのは、その間に起きる変化への対応力を身につけることです。それには常に学び続け、自分の頭で考える習慣を身につけることです。

 白根氏 まずは行動することが大事だと思います。考えて行動に移せば次の展開につながります。不安に振り回される悲観主義ではなく、意思を持って行動すれば楽観主義にも結びつきます。

 三上氏 変化のスピードがどんどん速くなっていく中で、コアになる自分がやりたいこと、成し遂げたいことをしっかりと持つことが大切だと思っています。

 水野氏 やはり行動を起こしていただきたいと思います。その際、相談することも大事ですので、金融機関を気軽に使っていただきたい。それが私たちの糧にもなります。お役にたてるよう頑張っていきたいと思っています。

【プロフィル】清家篤氏 せいけ・あつし 昭和53年、慶應義塾大学経済学部卒。博士(商学)。現在、社会保障制度改革推進会議議長、ILO「仕事の未来世界委員会」委員などを兼務。近著に『金融ジェロントロジー』(編著、東洋経済新報社)など。

【プロフィル】白根壽晴氏 しらね・としはる 昭和52年、早稲田大学法学部卒。住友電気工業を経て、58年、税理士登録。エフピーインテリジェンス代表取締役。平成24年から日本FP協会理事長。『定年後のお金 全疑問45』(東京書籍)など著書多数。

【プロフィル】三上洋一郎氏 みかみ・よういちろう 平成10年生まれ、兵庫県出身。デジタルマーケティングを手掛けるGNEX代表で、慶應義塾大学総合政策学部2年。昨年9月から内閣府の「人生100年時代構想会議」の有識者委員を務めている。

【プロフィル】水野晋一氏 みずの・しんいち 平成4年、関西大学商学部卒。野村証券入社。田園調布支店長、キャピタル・ノムラ・セキュリティーズ取締役社長などを経て、29年4月から執行役員プロダクツ・ソリューション担当兼アジア戦略副担当。

協賛 野村証券

後援 慶應義塾、慶應義塾大学グローバルリサーチインスティテュート

 野村証券を傘下に持つ野村ホールディングスと慶應義塾大学は、資産寿命を延ばし、生命寿命とのギャップをできるだけ縮小することなどを課題とするファイナンシャル・ジェロントロジー(金融老年学)の分野で共同研究を実施。同大学グローバルリサーチインスティテュートは「長寿」をテーマにした文理融合による学際的研究を最重点分野の一つと位置づけ取り組んでいる。

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