シンポジウム「100歳時代のライププラン~お金・仕事・生きがい」

 誰もが100歳まで生きることが当たり前となる時代に備え、産経新聞社が立ち上げた「100歳時代プロジェクト」は、シンポジウム「100歳時代のライフプラン~お金・仕事・生きがい~」を2月26日に東京都港区の慶應義塾大学三田キャンパスで開いた。

東京・三田の慶應義塾大三田キャンパスで開かれた「100歳時代プロジェクト」のシンポジウム=2月26日(酒巻俊介撮影) 東京・三田の慶應義塾大三田キャンパスで開かれた「100歳時代プロジェクト」のシンポジウム=2月26日(酒巻俊介撮影)

有識者による100歳時代プロジェクト会議ライフプラン委員会の委員を務める清家篤・同大学商学部教授が講演。白根壽晴・日本FP協会理事長、三上洋一郎・GNEX代表の委員2人と、水野晋一・野村証券執行役員が加わったパネルディスカッションも行い、100歳時代に求められるライフプランを探った。

基調講演「職業・資産寿命延ばし豊かな長寿社会」清家篤氏

 日本は世界に類を見ないレベルとスピードの高齢化を経験しつつあります。高齢化はさまざまな問題を引き起こします。しかし、それは日本の経済社会の成功の結果としての長寿によるものでもあり、その長寿を喜べるようにしなければなりません。そのためには、働く意思と能力がある間は働き続けられる職業寿命を延ばし、自分の持っている資産を活用し続けられる資産寿命を延ばし、そして人生を楽しむための活動である消費・社会活動寿命を延ばすことが重要です。その基本となるのが健康寿命を延ばすことなのです。これらの寿命を延ばし生涯現役を実現することは、個人の生活を豊かで活力あるものにすると同時に、日本社会を豊かで活力ある長寿社会とするために欠かせません。

 中でも最も大きな意味を持つのが職業寿命です。高齢化の一番のマイナスは労働力人口が減ることです。女性と高齢者の就労を促進し労働力人口の減少を抑えられれば、経済成長や社会保障制度を維持することができます。幸い日本の高齢者は働く意欲が高い。そして高い国際競争力を持つ中小企業の多くで生涯現役を実現しています。こうしたノウハウをもっと生かし、日本全体で共有していく必要があります。

 また多くの金融資産を持つ高齢者がその資産を運用できるようにすることは、個人の生活を豊かにすると同時に、企業の生産性を向上させるために必要な資本を提供し経済社会を成長させる原動力となります。

基調講演する慶應義塾大の清家篤教授=26日午後、東京・三田の慶應義塾大三田キャンパス(酒巻俊介撮影) 基調講演する慶應義塾大の清家篤教授=26日午後、東京・三田の慶應義塾大三田キャンパス(酒巻俊介撮影)

 問題は年を取ると認知能力などが低下し運用能力も低下してしまうことです。解決方法の一つは、事前の意思決定によって例えば信託や保険などで、将来的に運用益を得られるようにしておくことです。もう一つは、運用能力の低下には個人差も大きいので、金融機関のサービス対象を年齢で区切るのではなく、社員の研修や医師との連携などを通じて、個々人の認知能力などに応じて対応できるようにすることです。

 健康寿命、職業寿命、資産寿命を延ばす上で助けになるのが、人工知能やロボット、再生医療といった技術の進歩をもたらす第4次産業革命です。生命科学が健康寿命を延ばし、ロボット技術が介護を楽にするといったように高齢化とウィン・ウィンの関係になり得ると考えています。

 高齢化の問題を世界に先駆けて経験している日本が解決方法を見つけ出し発信することは世界への大きな貢献となります。豊かで活力ある長寿社会を将来世代に伝えていくには、若い世代の人たちにもしっかりと考えてもらうことも大切だと思っています。

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