【100歳時代プロジェクト】必要なのは「老化」への備え 東京慈恵医大・行動変容外来、横山医師

 人生100歳時代を迎え、認知症や寝たきりを予防する健康習慣を身につける必要性が増している。自分の体を自分でマネジメントするための行動変容を促す東京慈恵医大の横山啓太郎教授に、100歳時代に求められる「体づくり」の方法について聞いた。(道丸摩耶)

 横山教授によると、現代の医療は血圧や血糖値など「マーカー」を頼りに、臓器や器官別の疾患を専門医がみるのが普通だ。だが、高齢化により健康と病気の境界はあいまいになった。年を取ると、ひとつの臓器だけでなく全体が悪くなっていくからだ。例えば生活習慣を原因とする高血圧と高血糖の患者に対して、降圧剤で血圧を下げても血糖は下がらない。全身の老化を止めることもできない。

 「認知症や寝たきりは老化により引き起こされる状態であり、老化は薬では防げない。100歳時代に必要な医療はこれまでとは異なる。ところが、医療はいまだ健康と病気の境界がしっかりしていた人生70歳時代のままだ」と横山教授は指摘する。

 心筋梗塞や脳梗塞といった病気の救命率は上がった一方で、全身が弱っていく老化に対して「医療」ができることは少ない。老化を遅らせることができるのは、薬でなく運動や体に良い食事といった生活習慣の積み重ねだ。

 ただ、生活習慣を変えるのは容易ではない。長年、腎臓・高血圧内科の医師として高血圧の患者をみてきた横山教授は平成28年、東京慈恵医大病院に「行動変容外来」を開設。「がんや高血圧を治すために医者になったのに、患者から『100歳まで生きたくない』と言われる時代になった。何とかしないといけないと思った」からだ。

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