【100歳時代プロジェクト】脳動脈瘤治療体験記 クモ膜下出血、画像診断で予防可能

 ◆経過観察か手術か

 クモ膜下出血の場合、病院に着く前に2割が死亡し、治療できた人でも3分の2が死亡か障害が残る。根本教授は、動脈瘤が1センチ以上の場合には破裂リスクが高いので手術を推奨し、5ミリ以下は経過観察を勧めるそうだ。記者の6ミリは“境界領域”といえる。

平成横浜病院総合健診センターの東丸貴信センター長 平成横浜病院総合健診センターの東丸貴信センター長

 根本教授からは、脳動脈瘤の血管内手術では、まれに後遺症が出るリスクの説明とともに、手術か経過観察かの選択肢を示された。記者は手術を選択した。不安の残る中途半端な状態から解放されたかったからだ。ただ、根本教授は「その程度のサイズだと半年間様子を見て、大きくなるような変化があれば手術という選択もある」と話す。

 ◆コイル送り込み

 東京医科歯科大病院で行った手術は保険適用の「コイル塞栓術(そくせんじゅつ)」だった。コイルと呼ばれる非常にやわらかい針金状のプラチナをカテーテルで患部に送り込み、毛糸の玉を作るように丸めながら動脈瘤内に詰めていく。後でそこに血栓ができることで結果的に動脈瘤が塞がるというものだ。

 手術は全身麻酔で約2時間。太ももの付け根付近からカテーテルを動脈に挿入したのだが、受けている身としてあまり負担は感じず、あっさりと終わった印象だ。術後の痛みもほとんどなく、翌日からは食事もできた。退院後も以前と変わらぬ生活を送っている。

東京医科歯科大大学院・根本繁教授 東京医科歯科大大学院・根本繁教授

 終了後に、根本教授に取材をした。「末端の血管の細い部分で、脳の外側に近いような動脈瘤の場合は開頭手術で動脈瘤をクリップをかけてつぶす方法もある」という。こちらも治療法として長い実績があるそうだ。もし動脈瘤が見つかったらどうすべきか。根本教授は、「一定の治療件数を積んだ専門医に相談を」とアドバイスしている。

                   

 ■数年に1度はドックを

 発症前に自覚症状がほとんどない脳卒中や心臓病を防ぐにはどうしたらよいか。平成横浜病院総合健診センターの東丸(とまる)貴信センター長は、「数年に1度、脳ドックや心臓(循環器)ドックを受けることだ」と話す。特にクモ膜下出血は若くても起こるので、40代からの受診が勧められる。病気治療でないため健康保険は適用されず、両ドックとも検査項目・機器などで異なるが5万円前後。東丸センター長は「数年に1度なので、1年当たりでは約1万円。飲み代2回分を節約し突然死を防ぐと考えて」と訴える。

この記事にアクションする