【認知症薬に挑む】(下)日本発創薬「諦めない」 ノーベル賞の技術 血液1滴診断、現実味

 次世代の認知症治療薬の開発を目指すプロジェクトも動き出している。慶応大と製薬大手、エーザイは昨年4月、共同で新たな研究室「認知症イノベーションラボ」を設立した。同大大学院医学研究科の岡野栄之委員長は「Aβに固執するのではなく、全く新しい標的を見つけ出すことを目指す」と狙いを説明する。

 同大では100歳を超えても健康に生活する「百寿者」の研究を長年続けており、長寿者の遺伝子の解析にも取り組んでいる。岡野委員長は「認知症にならない百寿者の遺伝子を徹底的に調べることで、その人たちの状態に近づけるような治療薬や治療法を探っていきたい」と語る。

 エーザイの塚原克平上席執行役員は「新しい研究室を作ってまでやるのだから今までやっていなかったことをやる。他社が(認知症薬の開発を)やめても、われわれは諦めない」と日本初の認知症治療薬となった「アリセプト」を開発した製薬企業としての強い決意を口にした。

 研究室を率いるエーザイの黒光淳郎ラボラトリーヘッドも期待を込める。

 「百寿者の遺伝子には、根本的に認知症に対する防御機能が備えられている可能性もある。患者や家族の希望につながる研究成果を出したい」

 “認知症大国”の日本から、世界にも希望を与える創薬が期待されている。(道丸摩耶)

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