【認知症薬に挑む】(中)正解分からず試行錯誤 予防薬にシフトも

 一方で、Aβをターゲットとする従来の考え方とは異なるアプローチで、成果を出している会社がある。後発ながらフィルムで培った独自技術で新薬開発に挑んでいる富士フイルムだ。

 同社が開発中の治療薬「T-817MA」は、米国で実施した第2段階の臨床試験(治験)で、発症初期の患者の認知機能低下を抑制する効果が確認された。記憶をつかさどる「海馬」の萎縮を抑える傾向もみられ、最終の第3段階の治験を目指している。

 同社医薬品事業部の伴寿一(ばん・としかず)部長は「私たちは、脳内の免疫細胞が異常化した悪玉ミクログリアによって脳内の免疫バランスが崩れ、脳神経の崩壊が進み、認知症が発症するという仮説に立っている。T-817MAは、悪玉ミクログリアを正常化させる作用を持つ可能性がある」と解説する。

 他の多くの製薬会社がAβの蓄積を防いだり、蓄積したAβを減らしたりすることを狙っているのに対し、神経細胞の障害を軽減し保護することで認知症を防ごうというものだ。フィルムの酸化を防ぐ化合物の研究などが、新薬開発に生かされているという。

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