【認知症薬に挑む】(中)正解分からず試行錯誤 予防薬にシフトも

 ただ、効果がみられたのは発症から平均2・6年以内の初期の患者で、症状が進行してしまうと効かない可能性がある。試行錯誤を経て、同社の開発コンセプトは、認知症を治す「治療薬」から発症を防ぐ「予防薬」へと移行しつつある。

 伴部長は「一言でアルツハイマー型といっても人それぞれで、薬の効果に差が出ることが多い。認知症は本当にタフ」と開発の難しさを語る。それでも「症状が進んだ患者を救う治療薬を諦めたわけではない。発症のメカニズムが解明できれば可能性は広がる」と力を込めた。

 治療薬から予防薬へのシフトは世界的な潮流だ。症状が進んでしまうと、治療薬の効果が出にくいことはさまざまな臨床研究で証明されつつあり、軽度の認知症や認知症予備軍であるMCIの段階で投与し発症を遅らせる方が有効だという考え方が強まっている。

 問題は、もの忘れが多くなるといったMCI段階で該当者が医療機関にかかるケースは少なく、新薬開発に欠かせない治験の対象者を見つけるのが困難なことだ。新薬が世に出たときも、投与による予防を図るにはMCIの早期発見が重要となる。そうした需要に、日本発の技術が応えようとしている。(道丸摩耶)

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