認知症への備え 早期予防へ保険とサービス一体提供 太陽生命保険

知見蓄え、予防に貢献

 --運動や認知トレーニングなどが認知症の予防に効果的だといわれている

 朝田氏 私のところ(メモリークリニックお茶の水、同取手)ではMCIの方々に対して認知症へと進ませないことを目標に、筋トレやデュアルタスクなどの運動のほか、認知トレーニング、音楽、美術といったプログラムを提供しています。大事なのは我流ではなく、正しい方法でやってもらうこと。そのためには、インストラクターが必要です。インストラクターを通じて正しい情報を伝えるイベントや交流の場を設けるなど工夫が大切です。

パートナー企業分科会で発言する太陽生命保険の田村泰朗常務執行役員=18日、東京・大手町の産経新聞社(酒巻俊介撮影) パートナー企業分科会で発言する太陽生命保険の田村泰朗常務執行役員=18日、東京・大手町の産経新聞社(酒巻俊介撮影)

 島田氏 現実的な予防法の中核となるのは「活動」だと考えています。体を動かす身体的活動、頭を働かせる認知的活動、人と交流する社会的活動。これらをバランス良く組み合わせてやることが望ましい。おすすめしたいのは、体と頭の活動を同時に行うことです。それも、あまりに簡単すぎると、体にも頭にも負荷がかからず効果が期待できません。体は心臓が少しドキドキするくらい、頭は時々間違えるくらいの負荷が目安になります。

 田村氏 予防に取り組んでいただくにはやはり工夫が必要だと感じています。例えば、予防アプリについても、結果を他の人や全国平均と競えたり、脳のトレーニングゲーム機能を加えたりして、楽しみながら長く継続して使用いただけるよう、進化させていきたいと考えています。認知症に関する正しい情報をお客さまに提供することが、当社が目指している商品とサービス一体の取り組みにつながっていくと考えています。そのために予防に関して知見を蓄え、民間企業としてできる限りのことをしたいと思っています。

経済的負担に備え、常識化

 --「ひまわり認知症治療保険」「認知症治療保険」の合計契約件数が30万件を超え好調だ

パートナー企業分科会で発言する東京医科歯科大の朝田隆特任教授=18日、東京・大手町の産経新聞社(酒巻俊介撮影) パートナー企業分科会で発言する東京医科歯科大の朝田隆特任教授=18日、東京・大手町の産経新聞社(酒巻俊介撮影)

 田村氏 当社は一軒一軒ご家庭を訪問し、生命保険を販売させていただく営業スタイルをとっています。ご家庭に訪問していますと、企業の職場内で生命保険を販売するよりも、「超高齢化」という日本の社会の大きな変化を肌で感じます。顧客層の変化を痛感する中で、平成26年に、シニアのお客さまに最もやさしい生命保険会社になることを目指し、「ベストシニアサービス」という取り組みを始めました。その一環として、保険商品に加入いただける年齢の上限を75歳から85歳に引き上げたところ、多くのお客さまにご加入いただきました。さらに、70歳以上のお客さまを年1回訪問するサービスも始めました。

 このサービスを通じ、認知症に対して不安を感じていらっしゃる方が非常に多いということが、改めてよく分かってきました。そこで、認知症に対するお客さまの不安にお応えできる商品の開発に着手しました。平成28年3月の発売当初から大きな反響をいただき、29年12月末までに30万件以上のお客さまにご加入いただきました。このように大きなご支持をいただいているのは、単に商品を販売するだけではなく、商品とサービスを一体にしてご提供しているからだと考えています。例えば、認知症になると保険に加入していたことも十分に認知できなくなる可能性があります。そこでお客さまのご家族と連絡が取れるよう、ご契約時にご家族の連絡先を登録いただく「ご家族登録制度」を導入しています。さらに、ご請求手続きにあたり保険給付の専門知識を有する内務員が直接訪問して手続きをお手伝いする「かけつけ隊サービス」を開始し、お客さまに安心して確実に給付金などを受け取っていただけるような体制を整えています。このような取り組みこそが、これからますます大きな社会的な課題になる認知症に真摯(しんし)に向き合い、ご家庭のお役に立つ生命保険を販売する企業としての社会的使命と考えています。

 朝田氏 年金といった社会保障制度の持続性が不安視されるなか、やはり自分で備える必要がある。女性の平均寿命が90歳になろうかというなかで、加入年齢を85歳に引き上げることはもっともなことだと思います。これからは自分の安心の糧として備えを持っておきたいと考える人が確実に増えていく。現代に生きる者として、亡くなったときの生命保険と同じように、認知症になった場合の経済的な負担に備えることを、ある意味、社会常識化していくことが非常に重要だと思います。

 島田氏 認知症の予防つまり備えということでは、人によって準備状態が異なります。まだまだ無関心な人、関心はあるけれど何もしていない人、少し始めた人、いろいろな段階があると思います。今やらなければならないことは、無関心層の人たちに広く正しい知識を持ってもらうことだと考えています。そのための情報提供はまだまだ不十分で、そういった面での企業の取り組みは非常にありがたいと思っています。

社会保障制度を補完

 --認知症対策では、国・自治体、医療・研究機関、民間企業による産学官の連携が重要になる

 田村氏 民間企業にできることには限りはありますが、「ひまわり認知症治療保険」「認知症治療保険」の合計契約件数が30万件を超えたということはそれだけ認知症への関心や不安が大きいということです。そうしたお声に耳をよく傾け、お客さまのご期待にお応えしていきたいと思っています。そして、認知症に関する専門知識や最新情報もしっかり学習し、商品やサービスの開発に生かしていきたいと考えています。また全国に150を超える営業拠点がありますので、そうした拠点を活用して、認知症に関する知識、予防に関する情報をお届けできるような地域のお客さまに密着した取り組みもしていきたいと思っています。

 朝田氏 何に困っているのかといった最新情報というのは、民間の方が知っているはずです。連携ということでは国から自治体、民間という上意下達ではなく、下から上への下意上達が重要になると思います。これから介護保険制度も持続性が危うくなり、縮小せざるを得ない。そうしたときに、民間の認知症治療保険との相互補完が必要になってくる。保険の内容も、ケアマネジャーやナースの訪問といった現物支給のサービスがあってもいいのではないでしょうか。

 島田氏 やはり現状のサービスの持続に不安を抱えている社会保障制度と、相互補完的に民間保険を組み合わせ、必要なサービスを保持していくことが大切だと思います。日本の認知症の研究開発費というのは米国とは比較にならないほど少ないのが現状です。そこを何とか知恵で切り抜けるためには、産学官協働でリソース(資源)を持ち寄り研究体制を構築しなければならないと思っています。連携が今後の非常に大きな課題であり、それがないと、真の科学的根拠を明らかにすることはできないと感じています。

【用語解説】ひまわり認知症治療保険 平成28年3月に太陽生命保険が発売した、簡単なチェックで加入できる選択緩和型で認知症を保障する生命保険業界では初となる商品。生まれて初めてアルツハイマー型など器質性認知症に該当し、かつ意識障害の状態において所定の見当識障害があると診断確定され、その状態が180日継続した場合、給付金が支払われる。その他に7大生活習慣病や白内障、骨折なども保障。

【プロフィル】田村康朗氏 たむら・やすろう 昭和62年、太陽生命保険入社。四日市支社長、総合リスク管理部長、企画部長などを経て、平成29年4月から取締役常務執行役員。

【プロフィル】朝田隆氏 あさだ・たかし 昭和57年、東京医科歯科大学医学部卒。国立精神・神経センター武蔵病院精神科医長などを経て平成13年に筑波大学臨床医学系精神医学教授。26年から東京医科歯科大学医学部特任教授、27年からメモリークリニックお茶の水院長

【プロフィル】島田裕之氏 しまだ・ひろゆき 理学療法士を経て、平成15年、北里大学医学部大学院修了。東京都老人総合研究所研究員などを経て、22年、国立長寿医療研究センター自立支援システム開発室室長、26年から同センター予防老年学研究部長

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