【100歳時代プロジェクト】速歩より階段の上り下り 筋力維持、動脈硬化も抑制

 自宅や職場にある階段を眺めて“これを使って意図的に上り下りすることで、運動の代わりにできないか”と思ったことはないだろうか。実は、日本の学者によって既に研究が進められ、速歩よりも健康効果が高いとのデータが明らかにされている。さらに最近、それを補強する実験結果も示され、お金もかからず雨天でもできる運動法として注目されそうだ。(山本雅人)

 ■“貯金”作る負荷

 階段の上り下りの効果について研究しているのは、名古屋市立大の高石鉄雄副学長(総合生命理学部教授)。「健康のための運動といっても、身近な物や環境を生かした形でないと三日坊主になってしまう」との考えから、自転車をこぐことや階段の上り下りを利用できないかを調べている。

 健康長寿を阻害する寝たきりになることを防ぐには、足の筋力維持・強化が重要。高石氏は50代の男女12人を対象に、椅子からの立ち上がり▽平地歩行▽階段上り▽1段抜かしでの階段上り-の太ももの筋電図データを取り比較した。

 その結果、椅子からの立ち上がりを1とした場合、平地歩行は0・4の負荷しかかからなかったのに対し、階段上りは1・3、1段抜かしでの階段上りは1・7の負荷がかかることが分かった。

 高齢者の日常生活にとって重要なのは、座った状態からの立ち上がりが楽にできるかどうかだ。高石氏は階段上りと平地歩行との負荷の差について「立体移動と平面移動の違いが大きい。階段を上るのは片足でスクワットをしているようなもの」とたとえる。

 一方、平地歩行については「負荷が少なく筋力の“貯金”があまり作れない」とし、転倒による骨折や病気で長く寝込んだような場合、「筋肉に余力がないため、そのまま寝たきりになってしまう危険がある」という。そのため、「健康のため1日1万歩といわれているが、歩数が少し減ってもいいからアップダウンを取り入れてほしい」と強調する。

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