医療サイト、見極めが重要 「広告」扱いで虚偽・誇大排除

 「自分の症状をネットで調べたら、どうも、ある病気のようなのですが…」といって受診する人が最近、増えているという。100歳時代を乗り切るには医療の恩恵を受けることが不可欠で、手軽に医療情報を得られることから多くの人がウェブサイトを利用する。だが、虚偽や誇大な内容の掲載が後を絶たなかったことから、今年6月に新たな規制が始まった。(山本雅人)

信頼性が認定されると掲示できるマークを指し示すJIMAの三谷博明事務局長=東京都港区南青山 信頼性が認定されると掲示できるマークを指し示すJIMAの三谷博明事務局長=東京都港区南青山

 口コミを削除

 全国の開業医のうち、約5千人のインタビュー記事を掲載しているウェブサイト「ドクターズ・ファイル」。多くの患者を診る開業医は、一人一人の患者とゆっくり話す時間がなかなか取れない。ドクターズ・ファイルでは、各医師が自身の専門分野(診療科)について、なぜその分野を目指したかを語ったり、診療の際に心がけていることなどについて触れている。患者側にとっては、かかりつけ医の治療方針を知るツールとなる。

 このサイトから4月、患者投稿の「口コミ」のコーナーが削除された。投稿者の主観であり、客観的事実かどうか不明だとの判断からだ。

 このサイトを運営するギミック(東京)の横嶋大輔社長は「6月の新ガイドライン施行を前に、弁護士の判断を仰ぎながら内容を見直した」と語る。

 ガイドラインとは、厚生労働省が新たに示した「医療広告ガイドライン」を指す。6月に改正医療法が施行され、医療機関などのウェブサイトを「広告」として扱い、規制の対象になった。以前は、「情報を得ようとする人だけが主体的に閲覧する」との考え方から、テレビCMや雑誌、駅での看板といったものが該当する「医療広告」にはあたらないとしてきた。

 トラブル急増

 しかし、保険適用外の美容医療の分野などで、雑誌よりも、ウェブサイトで医療機関を調べる患者が多くなった平成20年前後を境にトラブルが増えてきた。

 このため、厚労省は24年に医療機関ホームページガイドラインを発表。ところが、これには罰則がなかったため、その後もトラブルが減らず、今回の新たな規制となった。

 サイトの適正化のために、医療機関向けの講習会などの事業を行っているNPO法人「日本インターネット医療協議会」(JIMA、同港区)の三谷博明事務局長によると、美容外科のサイトの中には、「25年間医療事故ゼロ」などとうたいながら、何年たっても「25年」のまま掲載、「事故」の規模・範囲も不明なものなどがあったという。

 また、高齢者が発症しやすいがんの医療の分野でも、「保険適用外の免疫療法を行っている医療機関で、費用について掲載せず、治療の際に高額な請求をしてトラブルとなるところがあった」と語る。新ガイドラインでは、主観による口コミや体験談のほか、患者が誤認する恐れのある「治療前・後」の写真も原則禁止にした。だが、厳密に対応していない医療機関もまだあるという。

 信頼性を認定

 JIMAでは、新ガイドラインの内容のほか、患者に分かりやすい表現や、過去のデータ・写真などはいつごろのものまで載せてよいかといったサイト全体にかかわる自主基準を設定する。審査を受け、信頼性があると認定したサイトに認定マークを付与している。

 認定を受けたサイトを開設する金子医院(埼玉県蕨市)の金子健二院長は「命にかかわる領域だけに、発信者はきちんと責任を持つべきだ」とした上で、「こういう取り組みが広がり、患者側にも認知されることが大切」と話している。認定を受けた医療機関などはJIMAのウェブサイト(http://www.jima.or.jp/)に一覧が掲載されている。

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