2つ目は違う人生を 元京大総長 井村裕夫さん(87)

井村裕夫さん 井村裕夫さん

 世界保健機関(WHO)では「健康」について、「身体的・精神的・社会的に良好な状態」と定義していて、単に病気でないから健康ということではありません。社会的健康には、仕事を持っているといったことも含まれます。

 人生70年といわれていた時代は、多くの人が60歳定年の後、10年の余生を送るといった形になっていました。しかし、寿命が延び、現在の日本では半数の人が生きられるのは何歳かという「中央値」を算出すると、女性は90歳に達しようとしています。さらに22世紀には100歳になるとされています。そうなると、これまでの1つの勤労人生から2つの勤労人生をおくることができる。「1つよりも2つ」と積極的にとらえ、仕事でも趣味でも1つ目とはかなり違うものに取り組むことをお勧めします。

 私は、60歳で京都大総長に選ばれて研究をやめ、高等教育の道へ。その後は科学技術会議(当時)議員として国の政策立案にかかわるという全く予期せぬ人生になりました。新たな分野を一から勉強していくことが刺激となって、87歳の現在も健康でいられるのだと思っています。新たな人生の準備のために60歳で大学に入るのもよし、前向きに生きてほしいと思います。

この記事にアクションする