アプリで専門医が診断サポート 医療とビジネス融合

 100歳時代の新しい医療モデルを探る動きが広がっている。

 三重県北部の精神科病院。認知症患者を中心に担当する精神科医師の物部真一郎氏(34)は入院病棟で男性患者の首に出ている発疹に気づいた。

 スマートフォンのアプリを立ち上げると、患部を撮影し、症状などの情報を入力し送信ボタンを押した。20分ほどすると、皮膚科の専門医から「急性湿疹か体部白癬(はくせん)」との見たてと、「病理検査を実施してください」とのアドバイスが返信されてきた。物部氏は「皮膚科や眼科の疾患は寿命に直接関わらないことも多く放置されがちだ」と話す。

患者の皮膚の患部をスマートフォンで撮影する医師の物部真一郎氏(左) 患者の皮膚の患部をスマートフォンで撮影する医師の物部真一郎氏(左)

 アプリを開発したのは、高知市に拠点を置くベンチャー企業の「エクスメディオ」。勤務医を経て米国に留学しMBA(経営学修士)を取得した物部氏が創業した。

 専門性の高い皮膚科と眼科の診断を専門医がサポートするもので、数十人の専門医が待機しており、30分以内に回答が送られてくる。離島などの僻地(へきち)だけでなく、都市部でも高齢や寝たきりで通院できない在宅や入院中の患者が、内科や精神科の主治医から皮膚科と眼科の診断を受けられる。すでに1万人以上の医師がアプリに登録した。

 「専門医の持つ先端の医療知識を共有することが重要。カルテが電子化されても情報は共有されない。50年前と変わっていない」と、物部氏は言う。

 同社は、米国の論文検索といった診断支援サービスも提供しており、将来は人工知能(AI)も活用する計画で、医療とビジネスの融合を目指している。

この記事にアクションする